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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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辛亥革命見聞記

東洋文庫の「辛亥革命見聞記」を一気に読んだ。フランス革命の伝統を
受け継いだ、フランスの社会科学自由学院教授、フェルナン・ファルジュネルの切り口が百年後の今もいきいきと蘇ってくる。
見聞記を書けるだけの予件として、彼は当時の袁世凱政権に対する
外国借款という「財政問題」に焦点を当てている。単なる中国語を使える社会学者
にとどまらず、フランスの借款団の「顧問」的な役割を担っていなければ、知りようのない詳細まで記述している。アメリカはこの借款が袁世凱政権を支えることになり、共和派をつぶすことになることからとして借款団から手を引く。ドイツはドイツのやり方。残った英露と日本という王室のある国家と王室を追い出したフランスの銀行団が袁世凱に大金を貸すことになる。塩税など中国内の税収を担保に抑えて。それで国内の税収が入らなくなり、魯迅たちの経験したような「給与未払い」の遠因が
この辺から起こっている。

著者はフランス革命で起こった同じようなことが辛亥革命で起こっている
と肌で感じている。王制を倒した後にくる「破壊」「火事場泥棒」「反革命」
そして議会開催ー利害対立ー独裁者登場、など革命の掲げたものと程遠い、また
相反した「財源の奪い合い」が「焦点」で、なんだかんだといっても
やはり「理想、理念」だけでは人間の社会は動かない。資金、借款etc.

訳者の石川湧が戦前に北京の古本屋で買った1冊の本がこれだ。(1914年出版)
彼はそのあとがきで、「数十年以前から≪阿Q正伝≫をはじめ魯迅の
諸作品の背景をなしている辛亥革命によって、いつもぼんやりとした
幻影のようなものにつきまとわれていた」…

数年前のある夜、共訳者の石川布美といっしょにテレビを見ていて、
「いちおう名の知られている解説者が…(内容はすっかり忘れたが)…その解説者は、話の途中で≪シンイ革命≫と言った。私たち二人はあっけにとられて…」という一段があった。
1970年に出版した当時、フランス文学専攻の彼らの思いは「シンイ革命」
と言っている日本で、中国に対する認識をいくらかでも広め、深めたい
ということから翻訳した、という。
辛亥革命百周年の今年、多くの人に読んでもらいたい面白い本である。



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