魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など
1980年代に北京に駐在していた頃、駐在仲間と酒を飲みながら、北京版イロハカルタのパロディーを作ったことがあった。「犬も歩けば棒にあたる」の句に対しては「犬もイヌ、猫もイヌ」が秀作と認められた。
1958年から1962年にかけて数千万人の犠牲者を出した大飢饉時には、犬はほとんど食べ尽くされ、いなくなってしまった。また、猫も同じ運命にあったという。
本社を大阪に置くキャットアイ社が、広東省の仏山市で自転車の後輪部につける赤い反射板を製造していたが、その会社と取引関係をもつフランスの輸入会社の社長夫婦が中国に来た折に、商談のために対応を命じられた。
その折、社長夫人から、中国では犬や猫やスズメなどをどこでも見かけないが、一体どうしたかと尋ねられた。彼女は、広東人はゲテモノ食いで犬を食べるということを知っていたが、まさか猫までも食べるとは思いもよらなかったという。
それで、中国滞在の長い私にその背景を尋ねてきたわけだが、私も猫がどうしていなくなったのか分からなかったので、その時は説明できなかった。
犬の肉は美味しいから食べてしまったのは分かる気がする。しかし、毛沢東時代に農業と人体に対して四害ありといわれたスズメ、ネズミ、ハエやカを大量に退治してしまった結果、スズメがエサとして食べていた虫が大量発生し、逆に困ったという話を聞いたことがある。ちなみに、広東料理屋で、龍といえばヘビで、トラが猫のことである。竜虎ともに食すというのが広東人らしいが……
さて、習主席が第一期就任後推しすすめた自画自賛の「トラを退治し、ハエを叩く」運動では、中国共産党員9,000万人のうち、150万人以上が退治されたという。スズメやネズミ退治によって害虫が大量発生したように、党員や役人退治によって何か食物連鎖が起こりはしないだろうか? そしてその食物連鎖によってどんな社会が到来するのだろうか? はなはだ興味深い。
2017.10.29作成
2017.11.14投稿
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