忍者ブログ

日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。

両地書30

両地書30
 魯迅先生机下
 6月13日の手紙拝受後、数日経ってしまいましたが、確かに「何もしていない」のに筆をとり、字を書く閑がありませんでした。人はなぜ「無聊」になるのでしょう?原因は外出して散歩しようとせぬからでしょうか?「休息」が取れ人に妨げられぬようにするには、やはり西山に行くのが一番でしょうか。家にいて「何もやりたくないし、見たくもない」と思っていても、誰かがドアーをノックしたら、身を隠そうにも隠せません。「休息」しようとしたらそういう境遇と機会を持たねばなりません:私の様に6人の級友と進退をともにしていると、(要請してきた)兵隊のおじさんたちが来てくれないと、電池を一歩も越えることができず、誠に苦しい状況です。自分自身考えると、長期間このままが続くと、接触する人を発狂させてしまうでしょう。自分の為を考えたら、暫くこの地から離れた方が良いのですが、そうはできません。離れられる境遇と機会があれば、やはりできる限り早くどこかへ去った方が良いのです。
 自分を消滅させる方法を作ると言っても、どうしても私は廃物利用の考えに反し、今この時、このような激しい考えの存在を許さないのです。但し、自分は神経質で、多くの刺激を受けると、反応しない訳にはゆかないのです。
 それで第一歩は、誰かに対して発砲し、第二歩は誰も容赦しない。自分は砂を抱いて水に沈むようなことはしないから、発狂するほか方法はないでしょう。これは神経が骨肉を支配し、感情が理知に勝り如何ともしがたいのです。無論私はこれが「幸福」とは思わないが、恐ろしいとも感じません。もしそういう日が来るなら、望むものは、誰かが一粒の鉄球か、毒薬の一針を打ってくれることです。病院に送られ麻痺した状態で生きてゆくよりましです。しかしこれは体裁よい言葉を弄んでいるだけで、故意に人を驚かすような話ですが、小鬼はやはり飽食したっぷり眠る凡人で、遊びもするし笑いもする。他の人と何ら変わりません。ある人は志を大きく誇張していうが、小鬼もその程度です。
吾師の曰く:私たちの様な若造の話には騙されぬ、と。今回は少し嘘を信じましたね。人より高い所にいる人は、愚を受け入れず、更に仔細に「髪の毛ほどのことも明察」しなければなりませんね。
 今の政府が民意を抑圧しないなどと、私は疑っておりますが、こっそり外国人に頭を下げてあやまりはしたが、いずれ機会を見て、まずは持ち上げておいて、その後抑圧すべく、文言も故意に大袈裟にしているのです。要するに上海の事はきっと拡大しても縮小することはなく、極東の混戦はここから始まりましょう。そうでなければ、自ら損をし、人が死に、更に賠償金を払ってあやまるなど、全くもって万代の恥で、千年の恨みを残します。死んだ方がましです。
「意外なところから、公理が飛んでくる」については多分夢としても望みがたく、洋鬼子(西洋人)は自分では間違っていると認識していても、彼らは実権を握っている人ではなく、丁度中国の今日の立派な人が、耳に聞きよい話はするが、実際の事に当たっては何にもできないのと同じです。先生は後生の若者たちを失望させまいと、話の中に何とかいい方法を見つけ、希望の持てるようなことを言われますが、事実はそんな容易ではありません。ある人たちは慰めの話を聞いても、無論安心などはしませんが、中にはそれを安心の依拠にして、気を緩める人も無いとは限りません。先生どうかご留意をお願いします。
 不易糊ではおかしなことを思い出しました。天津にいたころ、クリームの空き瓶を集めて、不易糊をつめて盤にのせて各所で安く販売しました。コストをかけないのだから損をするはずない、ということでしたが儲かりませんでした。品質が市販品より劣り、買ってくれる人もいませんでした。また石膏型で空洞の蝋の女の子の人形、子犬、獅子など小物のおもちゃをつくり、市販のセルロイドのおもちゃの代替を図ったのですが、とてもかなわず、失敗しました。
 「多くの犠牲を無駄に使い、却ってずるい連中に利を与えることになる」というのは私も常に心配しています。即ち、我が校の騒動も、冬休みに始めた人たちに、別に確かな用意がなかったとは言えませんし、だから私も傍観していたに過ぎず、今でも彼女らに別の用意があるとは言えませんが、学校側は実にぶざまな形で、忍耐しきれず、まずは第一歩の攻撃をし、次に建設的なことを考えたのです。これは私個人の考えですが、攻撃はすでに相手の捕虜にされた形で、建設は何も言えない状態です。従って、我々の目標は楊に対する不満で、このために動いたのですが、却って第3者に漁夫の利を取られ、労せずして捕獲され、それでは我々は連中に「利用」されてしまった。これは社会の暗黒で、バカをみたのです。本当に「少し不満を持ち、反抗し、改善しようとする」人たちにとって気持ち良いものではありません。とりわけ悪いのは:公に誰かを幹事に推挙するときは、一人ひとりは後ろ盾になって支援するからと言い、目の前で火薬を詰めながら、彼女が装備を整え、導火線に点火した時、彼女らはすぐさま遠くにさっさと逃げ出し、その結果、彼女は薬莢のごとく、粉々に粉砕するしかないのです。
 「京副」はやむを得ぬ苦衷があるのでしょうが、実に惜しいことです。没となったものと公表されたものを見て、蜘蛛の糸と馬の跡は固より調べられます。しかしこれで憤慨するには及びません。その実、これも人情(メンツ)の常で、責め過ぎてもしょうがない。吾師は「完全に利用されたことを見つけ」□□に不満を持ち(邪推か否かは知りませんが)何回も「壁にぶつかる」(魯迅の雑文の題名)ことで、義憤に駆られて、利用されたのではないでしょうか?どの道利用されるのだから、一笑に付して、大杯で飲酒されるのも可也です。
     小鬼許広平 6月17日午後6時

訳者雑感:許広平の文章も古典を引用したり、魯迅の作品をうまく取り入れているので、出版社の注をよくみないと、何を告げているのか分からなくなる時がある。
 それにしても、彼女も天津にいた頃、不易糊とかセルロイドの玩具の代替品を作って、輸入品ボイコットへの対応として、汗を流したのであろう。そういう行為をすることが愛国運動として、ジェスチャーだったのかもしれない。中国ではそれをしないと罵られるのだろう。
   2016/10/05記

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

06 2024/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

フリーエリア

最新CM

[09/21 佐々木淳]
[09/21 サンディ]
[09/20 佐々木淳]
[08/05 サンディ]
[07/21 岩田 茂雄]

最新TB

プロフィール

HN:
山善
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R