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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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米国TVドラマの「コンバット」と中国の抗日戦争映画について

米国TVドラマの「コンバット」と中国の抗日戦争映画について

 

中高生の頃、米国のテレビが面白くて毎週視ていた。それが原因で一浪した。

「逃亡者」とか「サンセット77」とか。なかでも人気だったのは「コンバット」だ。

フランスのレジスタンスと協力してナチスをやっつける。毎週同じようなパターンだが、相手はにっくきナチスだから、安心して見ていられた。ノルマンディに上陸する前に米軍がフランスでドラマのように活動できたか知らないが、今思い返せば、おかしな点がある。

 

 数年前まで、中国の連続テレビは清朝時代のドラマが主体だった。日本で言うならば江戸時代を舞台にした「時代劇」だ。水戸黄門のような満州族の親王や侠客が、各藩の悪い連中をとっちめ、悪代官を懲らしめる。安心して見ていられる内容だった。

 しかし最近それがどうも現代の腐敗した政府高官を糾弾していると怖れてか、そうした「時代劇」はまかりならぬということになった。

各テレビ局はどうしようか途方に暮れた。そこで生まれて来たのが、抗日戦のドラマで、毎週にっくき日本軍をやっつけるのだから、視聴者は安心して見ていられる。それもほとんどが共産軍と日本軍の白兵戦で、血沸き肉踊る内容だ。最後は日本軍がやられる。

 こうした風潮に対して、香港の(中国寄りの)鳳凰テレビの番組でも、少し違和感を抱く、というコメンテーターが出て来た。日本が中国を侵略してきた時、「日本軍が来た」として反抗したのは、①国民党軍、②軍閥・匪賊でだいぶ後になって③共産軍の順であった。③が映画のように日本軍と戦争したのは、本当は大変稀で、主には①と②の間での戦争が一番激しく、その次は①と③の間であって、日本軍とまともに戦闘行為をしたのは、①であって、日本軍兵士の話しでは、ドイツ製の銃火器で装備された国民党軍の一部はとても手ごわくて、ドイツ製の銃声が聞こえるとこりゃ強いぞと思ったという。

中国の多くの人々が認めるのは、①②③の間での戦闘であって、張学良が蒋介石を捕えた西安事件も、彼に内戦を止めさせ、一致協力して抗日すべきとの意思であった。

 私が70年代にシンガポールや台湾・香港で視た映画も、また80年代以降中国に駐在していた頃でも、あの時代の戦争映画は地主の為に戦う軍閥匪賊と国民党軍または共産軍の間の戦闘であった。史実はそうであることは、重々承知の上で、今は稀にしかなかった共産軍と日本軍の戦闘をテレビドラマのテーマにせざるを得ない状況なのだろう。

 「コンバット」が飽きられたように、2010年代の「抗日戦争映画」が飽きられるまで、我々は辛抱強く待つ外ないかも知れない。大半の年配の中国人は「ちょっとおかしいぞ」と思っているに違いない。心配なのは現在の中国の中高生があれを史実だと思ってしまうことだ。

日夜浮かぶ     2013/03/30

 

 

 

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