魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など
「18才未満御断り」
宓子章
5-6年来、外国映画はまず西洋の侠客の勇敢さをアッピールし、後に野蛮人の非文明性、そして西洋娘の曲線美と続いた。だが、目が肥えて来ると、数本の足では物足りず、沢山の足が登場した:だがそれもすぐ飽きて、ヌードがお目見えした。これが「ヌード活動写真大会(原題:自然回帰)」となった。正々堂々「肉体美と健康美を表現」しているのだが、「18才未満御断り」で、彼らはこの「美」の鑑賞の資格は無いということになった。
どうしてか?その宣伝文句は――
「とても賢い子が聞いた:お姉さんたちはどうしてふり向かないの?」
「厳正な父親が:なるほど映画館が18禁にしたわけだ、と」
これは勿論この作者のフィクションで、この映画は初映から18禁だったから、子供は見ることができなかった。だが本当に見させたら、そんなことを聞いただろうか?
思うに、そーかもしれぬが、この質問の意味は、(西廂記の人物の)張生が唱ったような、「あれ、どうしてこちらを向いてくれませぬのか?」とは別物である。しかし映画に登場する女性の態度は不自然で、子供たちを奇怪な感じにさせる。中国の子供はたぶん早熟で、性感も敏感だろうが、心は成人の「父親」ほど穢れてはいない。もし穢れているとしたら、20年後の中国社会は本当に心配だ。だが、実際はそうではない。だからあの会話は次のように改めるがよい:
「これは病みつきになってしまう。悪い映画だ!」
だが実際こんなふうに言える「父」はたぶんいないだろう。彼はどうしても「己の心で、人の心を度(はかる)そうとし、度した後で、その心を人の体に押し込んで、己のものではないふりをして、人の心は己ほど潔白ではないという。ヌードの女性がみな「こちらに振り向いてくれない」のは専らこの類の人間へ対応しているためだ。
彼女らはまさか白痴で「父」の目が子供よりいやらしいのを知らないのだろうか?
けれども中国社会はやはり「父」の類の社会で、劇が始まると「母」の類が献身し、「子」の類は誹りを受ける。たとえとても重大な局面になっても、「木蘭従軍」「汪踦衛国」といった(娘が男装して戦う物語)「女子と子供」を前面に立たせて、その場を糊塗する。
「吾国民は其れ、何を以て其の後を善くするや?」 4月5日
訳者雑感:1934年の上海の租界の外側(租界では上映禁止)でドイツの「自然回帰」という映画が上映され、その宣伝文句が上述の内容で、所謂18禁とされた次第。この映画が日本でも上映されたかどうか?ドイツはこうした関係の文化輸出は積極的である。このころ、ヒットラーは33年に首相になり、34年に総統兼首相となっている。
蒋介石の国民党は、植民地支配者の英米仏からの武器購入が(日本などとのからみもあり)難しいので、もっぱらドイツから輸入していた。敵の敵は味方である。日独伊三国同盟までのドイツは中国への武器輸出で、日本の利害と相反した行動をとっていた。
第一次世界大戦でドイツとその植民地を攻撃した日本とは敵対関係にあった。
それで、中国への武器輸出は自由自在で、ジャーナリストも南京に駐在していて、
例の1937年の南京陥落の時の映像付きの報道を世界に発信したのはドイツ人記者だった。
時めぐり、今中国が新しい軍備を拡張しようとしている時、フランスが比較的先行していたが、やはり制約が多いため、自由に買えないどころか、台湾に出す方が忙しいほど。
それで、今回習主席のロシア訪問にあわせ、大量の軍備を輸入する契約に調印したと発表した。ロシア側はまだ確認していない。この辺は両国の微妙な関係があろう。
戦後すぐはもっとも頼りになる兄貴分だったが、中ソ対立で仲がこじれ、敵対関係の様相も帯びていた。今、アメリカとの緊張が高まる中で、同じくアメリカと関係悪化中のロシアから大量の武器を手に入れて、自国で研究開発の助けにしたい。その辺の思惑を重々承知のロシアは、結局どういう対応になるだろうか?大量契約を世界に公表して、武器商人復活となると、周辺諸国が心配するだろう。アメリカの反発も気になる。
2013/03/30記
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