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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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文学社への書簡

編集者殿:
「文学」第2号の伍実氏の「中国のHughes」の冒頭に下記の一段があり――
『…ショ―翁は名流で、我々の自分で名流と任じている人たちが招いたもので、更に惟
名流が名流を招いたので、それで初めて魯迅氏と梅蘭芳博士が千載一遇の機会を得て、
一堂に会した。Hughesということになると、只単に我々の名流の心目中のその種の名流ではないのみならず、皮膚の色に顧忌が加わった!』
 確かに、ショーに会ったのは私一人ではないが、私が一度ショ―に会ったら、大小の文豪から、今まで嘲笑され罵られ、最近も例えばその為に、私と梅蘭芳を一緒に談じた名文となった。然し、あの時は招待者が私を呼んだのである。今回のHughes招待については、
私は通知も受けていないので、場所も時間も知らないから、どうして行けようか?たとえ呼ばれていても、行かないのも多分他の理由がある訳で、口誅筆伐の前に、もう少し考察しなければならぬようだ。今現在何の連絡もないのに、私が行かないと責めることはできぬし、行かぬからといって私が黒人を見下していると断定している。本人は信じているが、読者は事実について不明だが、たいてい信じるだろう。しかし私自身、私が畢竟そんなに権勢や利欲に走るような卑劣な人間になったとは信じられない。
 私を侮蔑し侮辱するのはいつものことだ:奇とするに足りぬし:もう慣れた。が、それはタブロイドや敵の発行物。少し識見を備えれば一目ですぐ分かる。だが「文学」は立派な看板を掲げ、私も同人だ。何ゆえに端無くもデタラメのことをこんなに辛辣な皮肉を書くのか!権勢や利欲に走る卑劣な老人が欠けているから、文学の舞台に踊らせて、観衆を愉快にさせ、且つ嘔吐させようとの魂胆か?私はまだそんな役柄に適した所にまで至ってはいないと信じている。その恐ろしい舞台から飛び降りられると信じている。その時はいかなる侮蔑嘲笑にも互いに矛盾は無い。
 伍実氏は仮名だと思うし、きっと彼も名流で、たとえHughesを招いても名流でなければ坐につけるとは限らぬ。だが彼が上海の所謂文壇でそれらのキツネやネズミとは違うなら、人身攻撃をする時は、少しは責任を負うべきで、彼本人に関する姓名を宣告して、本当の顔と口を開示せねばならぬ。これは政局にも無関係でなんら危険も無い。況や我々は
かつて面識があり、顔を会わせればきっと遠慮し合うかも知れぬ。
 最後にこの書簡を「文学」第3号に発表するよう要求する。  魯迅  7月29日
  
訳者雑感:雑誌「文学」で仮名による人身攻撃。よほど腹に据えかねたとみえる。出版社注では同誌の編集者の一人という。ちなみにHughesは1902―67の黒人作家で、この時訪ソして帰米途路上海に立ち寄り、上海文学社、現代雑誌社、中外新聞社などが招待会を開いた由。同人に対して編集者が仮名で人身攻撃する意味は何だったろうか?魯迅を攻撃のやり玉に挙げれば喜ぶ読者もいた。信じる読者もいたものか。 
 2012/03/06訳

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