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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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翻訳について

翻訳について      洛文
 私の散文が、穆木天氏の『「翻訳を擁護する」についてと、楼氏訳の
「20世紀の欧州文学」について』(「自由談」9月号所載)を惹起した。
とても光栄なことながら、指摘された点は全くの誤認だと思う。
 筆者の注釈の中から、私が思い到ったことを書いてみよう。
これを書くことは、なにがしかの意義があると思うので、下記する。
まず引用すると、199頁に
「この種の小説に最近、学術院(訳者:著者の所属するロシア共産主義学院)
が選んだルイ・ベルトランドの不朽の諸作品を、最優秀作品とした」と記すが、
この所謂「Academie」とは、アカデミー・フランセーズのことで、
ソ連は学芸の発達した国とはいえ、帝国主義作家のために、選集は出さないだろう。
なぜ楼氏があんな風にでたらめに注釈したのか理解できない」
 どこのアカデミーか私は分からない。
当然アカデミー・フランセーズとみるのが筋だろうが、
ソ連の大学院が帝国主義作家の選集を出すことはあり得ないと決めつけられない。
もし10年前ならもちろんあり得ない。物力的にも限りがあるのみならず、
革命の嬰児を守るために、滋養のあるものと、無益なもの・有害な食品を、
区別せずにいい加減に子供の前に置く訳にはいかない。
 今はもう大丈夫。嬰児は成長し、強壮で賢くなり、たとえアヘン・モルヒネを、
彼に見せても大きな危険は無い。
但し、言うまでも無いが、まず先覚者が「吸うと中毒となり、廃物となり、
社会の害虫になる」ことを明示すべきだ。
 事実、私はかつてソ連のアカデミーの新訳のアラビアの「千夜一夜」、
イタリアの「デカメロン」スペインの「ドンキホーテ」
英国の「ロビンソン漂流記」を見たことがある。新聞にトルストイ選集、
ゲーテ全集――より完璧な全集、という記事を見た。
ベルトランドはカトリックの宣伝者だけでなく、王朝主義の代弁者だが、
19世紀初めのドイツ ブルジョアジー文豪ゲーテに比べれば、
彼の作品がそれよりも有害だとも言えない。
だからソ連が彼の選集を出すことも大いに有りうると思う。
だが、それらの本の前文には必ず詳細な序文がつき、仔細な分析と、
正確な批評が加えられると思う。
 凡そ作者は読者との縁が遠いほど、その作品は読者にとっては無害である。
古典的、反動的で、イデオロギーも、大きく違っている作品は、大抵が、
新しい青年たちの心を打たない。(勿論正確な指示が必要だが)
却って、その中から描写のうまさと作者の工夫を学びとれる。
ちょうど、砒石の大塊のように、よく鑑賞した後、その殺傷能力と、
結晶の状態を知ることができる:薬物学と鉱物学の知識が得られる。
恐ろしいのは、微量の砒素を食物に入れ、青年が知らぬうちに飲んでしまう事。
似て非なる所謂「革命文学」のようになることである。
故意に激烈な所謂「唯物史観的批判」をするのはこの類だ。それは防がねばならぬ。
 私は青年も「帝国主義者」の作品を読んでもよいと言いたい。
古典にある「己を知り、彼を知る」だ。
青年は虎狼を見る為に、徒手空拳で深山に入るのは固よりよくない。
だが虎狼が恐ろしいからといって、鉄柵のある動物園にすら行こうとしないなら、
笑止千万で愚かなことだ。
 文学にとって有害な鉄柵とは何か?評論家がそれだ。 9月11日。
補記:本編は発刊できなかった。 9月15日。
 
訳者雑感:
魯迅は砒素を例に取りあげ、砒素を青年に知らないうちに飲ませるのは、
防がねばならぬ、と訴えている。
この当時、教条主義的・唯物史観的批判を金科玉条にして、
似て非なる「革命文学」が横行し、文学的に退歩した。
10年ほど前に、青年達に「中国の本は読む必要は無い」と訴えた彼は、
外国の本を読むようにと勧めている。
中国の本を読むと、沈んでゆくように感じる。インド以外の外国の本は、
読むと人間の生き方について考えさせてくれる、たとえ腐敗したものでも、と。
33年の段階では、「知己知彼」と孫子の兵法を引いて、西洋の古典を読めば、
その描写のうまさと作者の工夫を学びとることができると述べている。
ただ単に「革命文学」と唱えていても、中身が伴わなければ誰も読まない。
   2012/07/24訳
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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