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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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電気の便利さと弊害

電気の便利さと弊害
 日本の幕府時代に、大量のキリスト教徒を殺した。
その罰し方はとても残酷だったが、未公表なので誰も知るすべが無かった。
近年になって当時の多くの文献が出て来た。
「キリシタン殉教記」を見ると、中に拷問の状況が記され、温泉の近くに連行し、
熱湯をぶっかけ:或いは周囲に火を焚き、じっくりと火あぶりにする。
これは、本来は「火刑」だが、執行人は火を離して死刑者を虐殺した。
 中国にはもっと残酷なのがあった。
唐の小説に、さる県の役人が犯人の拷問に、少し離れた所から火であぶり、
喉が渇くと、醤油と酢を飲ませた。これは日本より進化したやり方だ。
今、役所は容疑者の拷問に唐ガラシの煎汁を鼻から注ぐが、唐以来のやり方だが、
或いは、古今、勇ましい人びとのやり方は略同じのようだ。
 かつて「反省院」(共産主義青年を収容した所)に囚われた青年の手記に、
最初にこの刑を受け、苦しくてたまらず、カラシの汁が肺と心臓にまで流れ込み、
不治の病となり、釈放されても死を免れぬという文を見た。
この人は陸軍の学生で、内蔵の構造を知らず、逆さ吊りにされ、鼻から注がれたら、
気管から肺に入り、死に至る病を起こしたが、心臓に入ることは無い。
きっと当時は苦しくて、知覚も朦朧とし、心臓にまで至ったと思ったのだろう。
 しかし現代文明人の造った刑具は、こうしたものよりずっと残酷である。
上海に電気刑があり、それだと全身が張り裂ける程痛く、昏倒する。
暫くして醒めると、又同じことをされる。連続7-8回受け、幸い死は免れたが、
歯はガタガタになり、神経麻痺で、復帰不能となった。
一昨年エジソンを記念し、多くの人は電信電話が人間に大変な便利をもたらしたと、
称賛したが、同じ電気がある人にはこんな大きな害を与えるとは思いもしなかった。
人に福を与える電気療法、美容もあるが、被圧迫者はこれで苦しみ落命する。
 外国では火薬で弾丸を作り、防御に使うが、中国ではそれで爆竹を作り敬神する:
外国では羅針盤で航海するが、中国ではそれで風水を見る:
外国ではアヘンで治療するが、中国ではそれを飯代わりに食す。
同じものが中国と外国での使われ方が、かくも異なるのは、蓋し電気だけでは無い。
       1月31日
訳者雑感:中国の処刑方法はなるべく長い時間をかけて、受刑者を残酷に扱い、
それを大衆に見せることで、悪いことをせぬようにとの見せしめが多かった。
日本でも鋸を首に切りこませ、通行人にひと引きずつさせて苦しむのを見させた。
最近、乃木将軍の切腹殉死に、介添え役を伴わず、自ら切腹して長時間苦しんで、
殉死した、という点について、名前は失念したが、確か日経かどこかの新聞に、
この介添え役を伴わぬことの意味が、自分の非を責めて、長い間苦しむことで、
その罪を購うのだ、という説を見て、なるほどそういうこともあるかと思った。
 
 火薬・羅針盤・印刷はいずれも中国で発明されたものだが、魯迅の指摘するように、
その使われ方はかくも異なっているとは!
アヘン鴉片Opiumは古くから、治療用に使われて来たものだが、中国ではそれを、
飯代わりに食す、という文は最初意味が判らなかった。
これは、推測だが、中国人は当時、飯を食わねば生きていけないように、
毎日アヘンを吸わねば生きてゆけないような中毒患者が沢山いたということだろう。
      2012/10/06訳
 
 
 
 
 
 

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