忍者ブログ

日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。

実を尊ぶ(実はこうだ)

実を尊ぶ(実はこうだ)
 事実は常に文字に書かれたようにはかっこよくない。
例えば「自由談」がそうで、実は不自由だから「自由談」と称して、
我々はかくも自由にこの場で談じているということになっている。
 もう一つの例は、北平の古物の搬送と、学生の避難を認めない問題の如く、
発令にも理があり、批評にも理があるが、すべては字面上のことにすぎず、
本質的な問題ではない。
 古物が大変古い物で、唯一無二の宝物だから、速やかに移動すべし。
これは誠にその通りだ。しかし北平も二つあるわけじゃないし、
なお且つ北平は全ての現存する古物よりずっと古いのだ。
 禹は一匹の虫だからあの頃のことはさて置いて、商周の時代には、
この地は確かに存在した。それなのに、この地は棄ててしまって、
ただ単に古物だけを運び出すのか?
実を言えば、本当は古物が「古い」為でなく、それらを北京陥落後、身に帯びて、
随時金に換えるためである。
 大学生は「中堅分子」とされているが、市価は無い。
もし欧米市場で一人500ドルの値がつけば、きっと箱に入れ、専用車で古物と共に、
北平から運び出し、租界の外国銀行の金庫に入れるに違いない。
 だが、大学生は数も多いし、新しい(骨董ではない)。惜しい哉!
 無駄口はこれくらいにして、崔顥の「黄鶴楼」の詩に和してこれを弔うとしよう:
 闊人(金持ち)すでに文化(古物)を帯びて去り、
 此の地空しく余す 文化城。
 文化ひとたび去りて、復た返らず、
 古城千載(千年の都) 冷清々たり。
 専用車列は前門駅に連なり、
 晦気(不運)は大学生を覆う。
 日薄くして山海関の何処に抗うや、
 煙花(花柳街)場上、人誰も驚かぬ。
      1月31日
訳者雑感:台湾の故宮博物館の宝物が日本で展示される。
日本での展示で懸念されたのが、北京が盗まれたものだ、差し押さられること。
1933年に北平に日本軍が侵略してくるというので、最初に侵略の手から守るべきは、
「古物」だと唱えて、どんどん専用車で南方に搬出した。魯迅が喝破しているのは、
国民党政府は、北平を放棄して「古物」だけ搬出する目的は、実はそれを随時換金する、
という意図だと。事実、今台湾に遺された物以外の、おびただしい量の古物が、
換金され、逃走の資金となった。     2012/10/05訳
 
 

拍手[1回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

06 2024/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

フリーエリア

最新CM

[09/21 佐々木淳]
[09/21 サンディ]
[09/20 佐々木淳]
[08/05 サンディ]
[07/21 岩田 茂雄]

最新TB

プロフィール

HN:
山善
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R