魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など
中国で、今年の春節前後のアワビとフカヒレの売れ行きががたんと落ちたそうだ。
習近平新主席が打ち出した、腐敗・汚職防止対策の一環だという。
一般の日本人には、なぜこれが腐敗・汚職防止なのか、なかなか理解できない。
私の大連の住まいの閑静な住宅街の一角に、有名なレストランが市内の繁華街から引っ越してきた。しゃれた2階建ての洋館で、地中海のどこかの建物を摸したようだ。
そこへ、連日のごとく、黒塗りのアウディやBMWなどの高級車が数台駐車している。
メニューには、アワビやフカヒレの料理が並んでいて、一人前300元とか500元と書いてある。我々外国人すら夕食に一人50元くらいしか払えないのと比較すれば、大変な金額である。一度300元のフカヒレを食べてみたいものだと思った。
なぜ、これが腐敗・汚職の土壌を作るのだろう?
中国の役人は、ベンツとかレクサスのような輸入車を公用車に使う事は禁じられている。
彼らが公用車として使えるのは、中国で組み立てられているアウディだ。
この辺まで書いてくると、「ははーん」と気づかれる人もいるだろう。
そうなのだ。アウディで来た客は大連の役人たちであり、BMWで来たのは業者なのだ。
では、アワビやフカヒレくらいで、どうして腐敗・汚職になるのか?
300元や500元など小さなものだ、という人もいるだろう。問題はその先にある。
実際の料理はアワビ・フカヒレの他に10皿以上の高級料理が供されて、一人当たり数千元の勘定になる。業者がそれを支払った後、何割かが役人への賄賂として「御足代」の形で料亭から払われるのだ。
この事自体で役人が得る賄賂などたかがしれているだろう。だが一旦そういう接待を受けると、それが毎月になり、毎週になり、どんどんのめり込んでゆき、其の業者へ特別の見返りを供して、防衛省の守屋次官と山田洋行のような関係ができてゆく。
そういう関係が、連日連夜、いろいろな階層の役人と業者の間でなされてゆき、役人は役人同士顔を見られても「同じ穴のむじな」だからいいが、繁華街の中にあっては、店から出て来た時、市民に見られて具合が悪い。だから閑静な住宅街に越してきたのだという。
今年の春節はアワビ・フカヒレの売れ行きがガタンと落ちたが、その代替として他の高額食材が、売れたことだろう。業者と料亭はすぐ次の手口を考え出すに違いない。
習主席のもう一つの勧告は、料理を一杯注文して大量に残すという悪しき習慣も廃止しようと呼びかけているが、果たして一朝一夕に改められるだろうか?
これは長い歴史の中で、主人は宴席で食べきれないほどの料理を卓に並べて、お客が腹いっぱい食べても、まだ残り、それを料理人・給仕・召し使い達が宴の終了後に食べられるように考えて、伝えられて来たものだから。
少ししか注文しないと、お客からももちろんだが、料理屋のお上からも、けちな客だといわれて、次からサービスが低下するのは覚悟せねばなるまい。
2013年2月27日、日夜浮かぶ
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