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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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詩と予言

詩と予言       虞明
 予言は総じて言えば詩で、詩人の大半は予言者だ。
予言は詩に過ぎぬが、詩は往々、予言より霊験あらたかである。
 例えば、辛亥革命時に忽然現れたのは:
「鋼刀99本を手に胡児(満州族)を殺し尽くせ」
 この「推背図」(占術で満州族の支配を倒せ)の予言は「詩」に過ぎぬ。
当時わずか99本の鋼刀などということがあろうか?洋式の銃砲がたくさんあり、
当然洋式の銃砲が優勢で、鋼刀しかなければ大敗したにちがいない。
まして当時の「胡児」は「殺し尽く」せていないばかりか、優遇すらしており、
今に到ってもなお「偽」溥儀がしゃしゃり出てくる始末である。
従って予言としてみると、この歌にはまったく霊験はない。
――杓子定規にこの予言に照らして物事を為すと、すぐ壁にぶつかる。
少し前、ほんとうに99本の鋼刀を特注し、前線の兵士に送ったが、
古北口等(熱河近郊、日本軍が華北進攻した地)で血が流れただけで、
国難には立ち向えないことを証明した。
この予言の数え唄を「詩」とみれば、「意を以て志を逆(むか)え、自ら之を得」
ということができる。
 詩の中には確かに極めて真に近い予言がある。
 予言を探すには「推背図」なぞは詩人の詩に及ばない。
多分このごろは又なにかを出させねばならぬ時代のようで、最近こんなのを見つけた。
「此輩の大きな狼は狂犬に従い、平素より人を獣のように狩る。
万人が一たび怒れば、もう挽回は無理で、太白が首に懸かるのを見る」
(汪精衛著「双照楼詩詞稿」:Hugoの「共和2年の戦士」の訳)
これは「机を叩いて絶叫」せずにいられようか。
この「大きな狼は狂犬に従う」というのは、自分は畜生なのに、
他人も畜生だとみて:畜生が狩りをし、人間は逆に狩られる!
「万人」の憤怒はもう押さえられぬ。
Hugoのこの詩は1793年(仏第一共和制)の市制党のことを指しているが、
140年後にもその霊験があろうとは予想もしなかったろう。
 汪氏がこの詩を数句訳したころ、その2-30年後の中国が口語の世界になるとは、
思いも及ばなかっただろう。
今この種の文語の詩の分かる人は少なくなり、大変残念である。
だが予言の妙所は、本当に分かったようで、どうも分からぬとの中間にあり、
もの事が完全にあらたかになった後、「はっと大悟する」のにある。
「天機(天の機密)は漏らすべからず」というやつだ。
       7月20日
訳者雑感:
 古代エジプトなどでも占星術など大変盛んであった。
為政者は次の手を打つに際し、星の運行とか日食とか天体の動きを占って
決めることで権威を保って来た由。
 中国の易というのは星も太陽もいろいろ使ったが、文字を使ったことも他の国
との比較において、面白いことと思う。
 動物の骨(肩甲骨)に筋を入れ、漢字を書いたものが発見されたのは
百年ほど前に過ぎぬが、
これらの甲骨文字は魯迅の言うように、予言であり亦詩でもあったろう。
 予言とか詩は分かったようで良くわからないその間に妙所がある。
どちらにも解釈できるが、ことがあらたかになった時、はっと大悟する。
ああ、あれはこういうことを予言していたのか、と。
       2012/05/31訳
 
 
 
 
 

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