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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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もう一人の窃火者

もう一人の窃火者    丁萌
 火の来源について、ギリシャ人はプロメテウスが天上から偸んできたと思っていて、
その為にゼウスの怒りに触れ、高い山の頂に鎖で繋がれ,
大鷹に毎日彼の肉を啄ばまれた。
 アフリカ原住民のWangyamwezi族(意味は月の人:出版社)も火を使用していたが、
ギリシャ人から教わったのではない。彼らにもう一人の窃火者がいたのだ。
 彼の名は誰も知らぬし、早くに忘れられた。彼は天上から火を偸んで来、
W族の祖先に伝えた。その為、タラス神の怒りに触れ…,
ここのところはギリシャ古伝と似ている。
が、タラスの懲らしめ方は異なり、山頂に繋がず、
密かに暗黒の洞穴に閉じ込め、誰にも知らせなかった。
派したのは大鷹ではなく、蚊、ノミ、南京虫で彼の血を吸わせ、皮膚を腫らせた。
そして次に派したのはハエで、奴らは傷口を見つけるのが得意で、
ぶんぶん唸りながら、
夢中になって吸いつき、同時に皮膚にフンを沢山つけ、彼がいかに汚いかを証明した。
 だが、W族はこの故事を知らない。
火は酋長の祖先が発明したもので、それを酋長が、
異端者を焼き殺し、家屋を焼き払うために使ったことしか知らない。
 今日では交通が発達したおかげで、
アフリカのハエのある者が中国に飛来してきて、
彼らの唸り声から、この事について少し聞き出せた。 7月8日
 
訳者雑感:
 魯迅の「華蓋集」に孫文をモデルにしてその死体に群がって、
ぶんぶん唸るハエが出て来る雑文がある。
孫文の死後9日目に書かれた「戦士とハエ」だ。孫文を戦士としている。
アフリカの窃火者は名も無く、忘れ去られているが、革命者ではないとしても、
この世を住み易いようにしようとした戦士だろう。
そういう事をした人を後の人は忘れてしまって、
その火は、異端を焼き殺すことや家屋を焼き払うことに使うことしか知らない。
 W族はタンザニアに住む2百万人程の部族だが、
魯迅はこれをどういう風にして思いついたか、
似たようなヒントから着想したものだろうか。
 
 話は変わるが、原発は第2の火だと言われる。
使い始めたのは現代のプロメテウスだが、
W族の人と同じで、それを天上から偸んできた人の名前を知らぬし、忘れてしまった。
原子力の火を偸んできた人は、W族の故事のように暗い洞窟に閉じ込められて、
蚊やハエに血を吸われ、皮膚はフンだらけで、如何にきたないかを証明されているのだろうか?
 
 英語のAtomとNuclearを原子力と核という別別の漢字を充てて、平和利用と武器用に
使い分けているのは原爆を落とされた日本人の「耳の錯覚」を誘因しているようだ。
元元原爆はAtomic Bombで原子力発電は Nuclear Powerだから、本来は、核発電と
訳すところを原子力発電(原発)としたのは核というと核爆発とか核実験を思い出させて、
拒否反応が顕著になるのを怖れたものか。今回は水素爆発だったが。
 今回の福島の事故はメルトダウンという一般人には分かり難い専門用語のまま使っている。
核爆発を想起させる炉心溶融という漢字はとてもおそろしい感じがする。
炉心で何が溶融しているのだろう。
       2012/05/28訳

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