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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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曲の解放

曲の解放(戯曲とは元曲、即ち後に京劇などに発展した曲の意)
「詞の解放」は特集号が出、詞で母を罵るとか、「麻雀すら可能」になった。
戯曲はなぜ解放できぬか、破廉恥のデタラメになるからか?
だが「戯曲」が解放されたら、当然「ありのまま」でなければならぬ。
――舞台裏のものが前面に出るのだから――詩人の温柔敦厚さが失われるだろう。
平仄が不調になり、声律が乖離することも起きるだろう。
 
   『平津会』雑劇
生(男役)登場:良い連続劇は尋常じゃない:攘夷期間も国内安寧に忙しい。
 只、熱河から湯玉麟(熱河主席)が早々と逃亡したのを怨む:
鑼鼓が鳴る前に引っ込んだ。(唱)
{短柱天浄紗:越曲の名}で。
 熱湯の恥知らずが――逃げた!(熱河と湯玉麟の頭文字をかけたもの)(唱)
 抵抗するふりをして――何になる? 
(熱湯は東京知事を放り出した石原氏を「東石」と言う如し:訳者注)
旦(女形)登場(唱):中央政府にならって:旅装を整え西に向かうか。
 咸陽へ奔走するよう相談さ。
生:この野郎。…低い声で:傍らのあの湯児を見てみろ。
 奴はもう演じ続ける気などあるものか。俺の所には分けられない口がある。
 良い劇を演じてみれば、すぐこんなにもひどい状況。ひとに迷惑かけよって!
旦:それがどうしたって言うのさ。もう一度「査弁」を出せばいいのさ。
 我々は一夫一婦、正副そろって唱ってゆけるさ。
生:よし。(唱)
{顛倒陽春曲}民衆の前で、指を突き付けて、張学良を罵り、なぜ抵抗しないのか!
旦が背後で唱)どさくさにまぎれて、ごまかすな!只、そのふりをしているだけ!
      みんな、どんどん罵れ。何の遠慮も要らない。
丑(道化)が袋を担いであわてて登場) あれー!てーへんだ!
旦が丑を抱くしぐさして)息子よ!そんなにあわててどうしたの!
     はやく前にきて、袋を担いで、我々もはやく荷造りしよう(唱)
{顛倒陽春曲}人にそむいて、湯を憐れみ抱き寄せる。
       一声罵り、無駄な抵抗する。
       舞台ではとても慌てた形相を呈するが。
       只、旅装を整えるに過ぎぬ、
       待ってみよう。
丑、哭して)お前たち、旅の支度だ!俺のはまだ全部揃ってない。
さあ、見ろ! (袋を指さして)
旦)息子よ、早く扶桑に逃げな!
生)雷の如く烈しく、風の如く速く。査弁は忙しい。
丑)こんな犠牲を払って、何の意味があるんだ。
  堂々たる男一匹、風光あり。(同下)   
     3月9日
 
訳者雑感:
 先に「詞」(宋代の詩形)を解放することが提起され、雑誌に特集号がでた。
今回、「曲」(元曲以来の各地の伝統劇のなかの音曲つきの劇:オペラの如し)
の解放をしてみようと、魯迅は日本軍の熱河進攻とその主席湯玉麟の慌てぶり、
それと東北・華北一帯を支配していた軍閥張学良の当時の行動・振舞いを戯劇に
したてて、「曲の解放」として、詩作している。
 伝統劇は「三国演技」や「水滸伝」など歴史的史実をベースに、面白おかしく、
脚本化して民衆に受け入れられて、発展してきた。
題材を現代に採るという試みは、その後も続けられ、文革時代、
江青なども4人組の文芸関係者に指示して、新版京劇を幾つか作った。
当時は我々もそれしかないので、それを観たものだが、今はあまり演じられなくなった。
やはり中国民衆は、長いヒゲを垂らした、諸葛孔明などの方が、好きなのであろう。
筋も知っており、何度も観ているもののほうが、安心して観ることができる。
心の安寧が第一のようだ。新作より。
     2012/10/30訳
       
 
 
 

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