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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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魯迅の無菌化

チュニジアに端を発した独裁政権打倒の動きはエジプト、リビアにまで星火燎原
のごとく広がりつつある。その速さは火の速さより速い光の速さのようだ。
中国も自らを独裁政権と認識している。かつては無産階級(プロレタリア)専政
という言葉を使っていた。専制政治を短縮して専政という。日本語訳は独裁となる。
今は共産党の一党専政と標榜し、他の会派、党派は国政への参加を認めず、
ただ参考までに意見を聞きましょうという「政治協商会議」でガス抜きをしている。

 2月23日の朝日新聞の天声人語に、マーク トウエインの「ハックルベリー フィン
の冒険」のニガーという言葉が2百も出てくるのをスレーブという言葉にして
子供たちにも読んでもらおうとしていることに対して、NY タイムズが
「無菌化」と批判していることを紹介している。
この本は発売当時から「若草物語」の作者オルコットが、粗野で無教養だとして
発売禁止を働きかけていた由。
天声人語は この作品が子供たちにどういう影響を与えるか、ニガー派と
スレーブ派の双方が侃侃諤々議論を戦わせることが大事だと結んでいる。

 昨年、魯迅の全身にすっぽりとコンドームを被せてしまっている図柄が
インターネットにも表れた。
趙無眠のホームページより。 意味するところは、政権批判、あるいは1920年代で譬えれば、
オルコットに代表されるような中国の文人学者(正人君子)の猛烈な否定、
北京から逃れなければならぬほどの身の危険をも顧みず、刺激的な「匕首」
のような鋭い言葉で、論敵を徹底批判した魯迅のような「振る舞い」を、
現代の作家や反政府分子が「再演」することのないように、
すっぽりとコンドームで包んでしまう。
こうすれば、魯迅の言葉のような「スペルマ」も外部に発射されることは無く、
現体制への批判者も
同様に何か発したら「魯迅のコンドーム」を被せるぞよ、と脅している訳だ。

魯迅の無菌化。 
そして魯迅のスペルマを受け継いだ「作家」が誕生することのないように、と。
今の政権にとっては、魯迅の子供たちが、孫悟空の髪から生まれたように
うじゃうじゃでてきてもらっては、迷惑この上ない。
ちなみに岩波版の西田実訳ではニガーを「黒んぼ」と訳した理由を解説している由。
「ちびくろサンボ」という人気絵本が販売自粛?禁止になって久しい。
「阿Q正伝」(大胆に意訳すると「辮髪男はつらいよ」)もひょっとすると中身が
「無菌化」されるか、或いは「ハックルベリー」と同様、学校の生徒には読ませない
ように指導されるかもしれない。
今の中国は その是非をめぐって侃侃諤々議論できる状況にはない。
かえって1920年代の方が、文字の獄で捕えられて斧や鉞で首を切られる心配は
あったが,それでも出版することはなんとかできたそうだ。
それも30年代にはかなわなくなったと魯迅たちも嘆じている。  2011.2.23.

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