魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など
「海上述林」下巻序言
この巻に収めたのは文学作品で:詩・戯曲・小説だ。全て翻訳である。
編集の底本としたのは「クリム・サムチンの一生」(ゴルキー作:注)の残稿以外、大抵は印本である。只「唾罵の閑も無い」は訳者自ら校正した印本を基に、誤字を数字改めた。ゴルキーの初期の創作も原稿と対比し、数か所注釈を付したが、残念ながら保存しようとしていた「第13篇、レールモントフの小説について」の原稿は遺失しており、印本には疑わしき所があるが、質す術も無く、小引(前書き)すら、多分初稿そのままとは限らぬ。
訳者が翻訳に撰んだ底本はどうも何の原則も無いようだ。見たところ:一つは入手可能なもの、二つは発表可能かどうか、を基に訳し始めた。そして時には挿絵に引かれて、LekhterevとBartoの絵のように、いずれも訳者が大変愛したものだ。最後の小説の前の小引を見ればわかる。故にここでは体裁は上巻と異なるのを顧みず、凡そ原本の全ての絵画は挿入し――これは当然これで以て読者の興趣を高めようとの思いからだが、いささか「剣を空壟(塚)に懸ける」(訳者は政府に処刑されて遺体は不明:出版社注では文選から引用)の意味もある。辞句に関しては上巻と悉く同じで、ここでは繰り返さない。
1936年4月末 編者
訳者雑感:上巻に続いて下巻にも魯迅は瞿秋白に対する愛情がにじみ出ている序言である。彼は政府に処刑されたまま遺体もどこにあるか不明である。彼が愛した挿絵を全て挿入して、遺体の無い空の塚に剣を懸けたという故事にちなんで、彼への追悼とした。
2014/12/10記
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