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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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女性解放について

女性解放について
 孔子曰:
「唯女子と小人は養い難し、之を近づければ則不遜、之を遠ざければ則怨む」
女子と小人を一緒にしているが、彼の母親を含むか否か知らない。
後に道学の先生は、母に対しては表面的には必ず敬って大切にしたと言える。
そうではあるが、中国で母となる女性は自分の息子以外の男の軽蔑をまだ受けている。
 辛亥革命後、参政権で有名な沈佩貞女士は、議院の門衛を蹴り倒したという。
だがそれは彼が自分で転んだのではないかと思う。
我々男が蹴ったりしたら、彼はきっと反撃して蹴り返してくるに違いない。
これは女の得な点だ。まだ他にもある。今奥方たちは金持ちの男と並んで立って、港や式場で写真を撮る:
或いは船や飛行機の進水式や処女飛行式で前に出てシャンペンを割る。
(これは小姐でなければならぬという説もあり、詳しく知らぬが)
これも女の得な点。この外、いろいろな新職業で、只給料が低く、よく言いつけを聞くからとして工場が好んで雇用する女工を除いて、他の場合は大抵、
女であるというだけで良いから、一面では「花瓶」と言われる。
 別の面では「接待するのは全員女性」という光栄な広告もよく見る。
男はこのような突拍子もないような出世をしようにも、男だというだけではダメである。
イヌにでも変じないと無理である。
 これは五四運動後、女性解放を提唱して以来の成果だ。
しかし職業婦人の苦痛の呻(うめき)もよく耳にする。
評論家の新しい女性に対する嘲笑だ。
彼女たちは閨房から社会に出たが、実はまたみんなに玩笑と、
論議のネタになってしまった。
 
 彼女たちは社会に出たとはいえ、やはり他の人に「養」われている為だ:
他の人に「養」ってもらおうとすると、他人の文句も聞かねばならず、
侮辱すら受けねばならぬ。
孔夫子の文句をみれば、彼が「養」い難し、「近づけても、遠ざけても、どうも
具合がよくないと知る。これも今の男、大丈夫たちの一般的嘆息だ。
また女の一般的な苦痛である。「養」と「扶養」の境界を消滅させるまでは、
この嘆息と苦痛は永遠に消えない。
 これは改革のできていない社会では、すべての新しいことがらは、
すべて単に看板に過ぎず、実際は以前と何ら変わっていない。
籠から取り出した小鳥を竿の上に乗せると、地位は変わった様に見えるが、
実は単に人間の玩意に供されているに過ぎず、飲食も人の命令に従うしかない。
俗語に言う:一飯を受ければ、その言いつけを聞く、というのがそれだ。
だから、全女性が男と同等の経済力を持たねば、耳障りの良い名目はみな、
空言となる。
 もちろん、生理上心理上、男女に差があり:同じ性でもそれぞれ差があるが、
地位は同等であるべきだ。地位を同等にしてはじめて真の女子と男子が生まれ、
嘆息と苦痛が消える。
 真の解放の前は、戦である。
しかし女が男と同じように鉄砲を持つべしとか、自分の子供に授乳すべしとか、
男子にもその一半を負担させよとか言っているのではない。
 ただ、目下の暫定的な位置に安住していてはダメで、
不断に思想と経済などの解放の為に戦うべきだと思う。
社会を解放したら、自己も解放できる。
だがもちろん単に従来からの女性だけの桎梏のために闘争することも必要だ、
 私は女性問題を研究していないので、何か書けと言われても、
これくらいの空言しかない。
   10月21日

訳者雑感:
 女子と小人は養い難しの小人という2文字は日本語では大人と小人と書くと、
入場料の掲示などで子供の意味になるので、女性と子供は養い難い、と誤解していた。
近づければ不遜、遠ざければ怨む。と続くとどうやら子供ではないとなる。
子供は不遜な態度は取らないだろう。怨むことはあるかもしれぬが。
改めて新華辞典をひくと、古代身分が卑しいものを指した。それが自称になった。
また、人格が低くて卑しい者を指し、無恥な小人などと言う、云々。
 こう見て来ると、小人といっしょにされた女子は大変面白くないことになる。
しかし自分の母親以外の女性を尊敬するとか大切にするという気持ちは、
古来中国には無かったのかもしれない。
 美女や烈女とか貞節なとか女性を称える形容詞はたくさんあるが、
儒教の影響の強かった時代は、男女平等とか男女同権という発想すら出てこなかった。
魯迅は本文をどこかの新聞か雑誌に発表したものかどうか未詳だと注にある。
女性問題を研究したことがない、というが、やはり女性解放の為にも、
社会そのものを解放せねばならぬと説く。桎梏からの解放である。
あれもダメ、これもダメという封建社会からの桎梏を取っ払わねば、
中国人は救われぬ、と。
        2012/04/07訳

 

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