バーバードショーは世界遊覧しているのではない。彼は世界の新聞記者の口と顔を歴覧し、口頭試験を受けているのだ――結果、落第したのだが。
彼は歓迎されたいとも思わないし記者にも会いたくないが、どうしても歓迎し、面談したいと言いつつ、面談の後では何か皮肉を言うことになる。
彼は身を隠そうとするが、どうしても探し出そうとし、探し出した後、長い記事を載せ、彼は自己宣伝がうまいという。
話したくないというのに、なんとか話をさせようとする。しゃべらないと、何とかもっとしゃべらせようとし、たくさんしゃべると、新聞にそのまま掲載せずに、彼はとてもおしゃべりだとけちをつける。
彼は真面目な話をするのだが、それを冗談だとし、彼に向ってわははと笑いながら、彼はどうして笑わないかと怪しむ。
彼は率直に話すのだが、それを風刺だとし、彼に向ってわははと笑いながら、やはり彼は自分を利口だと思っているとけなす。
彼は本来風刺家ではないのに、なんでも風刺だといい、つまらぬ風刺で以て彼に逆襲しようとする。
彼は百科全書でもないのに、そう考えて、天地のことなどあれこれ質問するが、答えに対してはとても不満で、まるで自分の方がとっくに知っているとでも言いたげだ。
遊覧に来たのに、無理やり道理を語れと迫り、少し話すと、気分を害し彼は「赤化宣伝」に来たとけちをつける。
ある者は、彼はマルクス主義文学者じゃないと軽視するが、そういう人は会わぬが良い。
ある者は、彼が労働者になろうとしないと見下すが、労働者なら上海に来られない。
彼を見下す人は会えなかったろう。
ある者は、彼は革命実践家じゃないと見下すが、もし実践家ならNaulen(コミンテルンから中国に秘密工作に派遣され投獄された:出版社注)と一緒に牢にいる。見下す人は彼の事と取りあげようと思わぬが良い。
彼は金持ちのくせに、社会主義の話をするが、労働者になろうとせず、遊覧のために上海まで来て、革命を語ろうとし、ソ連のことを話して人々の気分を害する……。
それでとても憎まれた。
背が高いことで憎まれ、おいぼれだと憎まれ、ひげが白いと憎まれ、歓迎を喜ばぬと憎まれ、面談から逃げると憎まれ、夫人とむつまじいことすら憎まれた。
しかし彼は去っていった、人々に「矛盾」に満ちた男と認定されたショー。
思うに、やはり辛抱して、暫くはこの様なショーを現在世界の文豪としておこう、いろいろけちをつけても打倒できない文豪として。さらには、皆がぶつぶつ文句が言えるようにしておく為には、やはり彼がいた方が良い。
矛盾に満ちたショーが没落する時、ショーの矛盾が解決される時は、社会の矛盾も解決される時で、それこそほんとに冗談ではないのだ。
2月19日夜
訳者雑感:
金があって世界漫遊の旅に出たバーナードショー。魯迅は彼と一緒に写真を撮った。本文にある通り、背が高くて白いひげもじゃの男に横にずっと小柄な魯迅がいる。
上海の記者たちは何とかして彼とのインタヴュー記事を書こうとする。だが群盲象を撫でるで、なんやかやとけちをつけ、文句をつけた。その結果ショーは「矛盾」だらけの男と認定された。金持ちでありながらソ連のことを褒める。その一方で労働者にはならない。
彼が没落した時、彼の矛盾が解決される時は社会の矛盾も解決される、という。これは、何を意味するのだろう。ショーの立場は魯迅の立場に近いと思われる。魯迅はこの時、ショーを自分になぞらえてこの文を書いたのであろうか。
自分が没落した時、すなわちこの世に要らなくなった時、自分のかかえている矛盾が解決される時、社会も良くなるだろう、と考えていたのか。矛盾に満ちた男として、新聞記者や青年文学家たちに文句をつけられ、攻撃されながら。
2012/01/23訳
[0回]
PR