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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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「これを記録として残す」2

「これを記録として残す」
              暁角

2.
 「申報」8月9日号に当地の人、盛阿大に養女有り、名を杏珍16歳、6日に突然失踪し、盛は部屋の衣服を点検し、杏珍の文箱から恋文を発見、それには:
「光陰矢のごとし、あれから6ヶ月半、ここで悶々と過ごしているが、考えてみれば無窮の快楽が目の前にあり、時日を数えればまもなく我々の時が到来するから、万事秘密が肝要で、何か良い物があって機会があれば持ってきてください。お金は大事にしてください。まもなく我々にはお金が必要になるから、くれぐれも無駄遣いしないで、体も大切にしてください。私は今ベッドで君を思い、朝はバルコニーで君の開門を待ち、君の姿を見ると元気になります。どうぞ余り思い悩まず、また会いましょう。健康で、本も読んでくださいね」
 盛はこれを警察に渡し、ほどなく誘拐者を捕えた。
 この種の事件は教訓とするには足りない。が、その手紙は申し分の無い語録体の情書で、「宇宙風」に載せたら佳作とされようが、惜しいかな林語堂博士は米国へ講演に赴かれ、もう中国の文学風習を顧みることはなくなってしまった。
 今ここに録すは、以て他日「中国語録体文学史」を作る時に採択されるのに備えしもの。その作者は「申報」によれば、フランス租界の蒲石路479号にある協盛果物店員で無錫の項三宝なり。

訳者雑感:この時代の中国は身代金目当ての誘拐事件が多発した。私が天津でテニスを通じて親しくなった梁さんの長兄も誘拐され、多額の身代金を払ったが、遺体となって帰って来た、と「天津の十大買弁」という本にある。
 魯迅がここで揶揄しながら記録に残そうとしているのも、林語堂たちへの強烈な批判である。アメリカに去ってしまった相手にさえ、こうして罵ることを辞さない、林も辟易したに違いない。彼は戦時を逃れ米国で中国関係の文章を書いて発表している。それが米国人には中国理解の良書として受け入れられたようだ。
   2015/01/01記
 

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