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日夜浮かぶの翻訳雑感

魯迅の翻訳と訳者の雑感 大連、京都の随想など

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迎神と人を咬み殺すこと

     越僑

 新聞に、余姚(浙江省)の某郷で、農民が旱魃のため、神を迎えて雨乞いしたが、見物人の中に帽子を被っていた者がいたので、刀や棒で殴った由。

 これは迷信だが根拠があり、漢の先儒、董仲舒先生は祈雨の法を有し、寡婦を使うとか、城門を閉めるとか、烏煙瘴気(黒い煙もくもく)というべきか、その古怪さは道士と異ならぬが、これまで儒者は訂正してこなかった。大都市でも今まだ(第36代の)天師の雨乞い作法や長官の(雨乞いの為に家畜の)屠殺禁止令で、大騒ぎをするが、誰もそれに文句をつけない。帽子を被った男を殴るのは、神が見て、まだ悠然自得の者がいると感じて、哀憐を垂れないことを怖れるからだ:もう一つの面では、彼が皆と患難を共にしないのを憎むのだ。

 迎神する農民の本意は、死からの救いで――迷信にすぎぬが――これ以外の方法を知らないからだ。

 新聞にはまた、60余才の老(国民)党員が出てきて、迎神を阻止するように勧めたので、皆から袋叩きにあい、ついには喉を咬まれて死んでしまったとある。

 これは妄信だが、これにも根拠がある。「精忠説岳全伝」(小説で、岳飛が咬み殺される)に、張俊が忠良を陥れて害したとき、ついに衆人が咬み殺し、人々は之に快哉を叫んだ。

この為、田舎ではこれまで伝説で、咬み殺したら、皇帝は必ずこれを赦し、『怨恨の余り、咬むに至るのは、咬まれた者が悪いとするのは当然のこととなった』法律はどうなっているか知らぬが、多分民国以前の律文に、こうした規定がある訳では無かろうが。

 人を咬む農民の本意は、死から逃れることで――迷信にすぎないが――これ以外の方法を知らないからだ。

 死からの救い、死から逃れようとするのだが、その結末は却って死を速める。
哀哉!

 帝国から民国になってから、上部の変革は少なくなかったが、教育の無い農民は、一つも新しい有益なものを得ていない。依然として古い迷信、古くからの誤った言い伝えを守り、懸命になって死から救われ、死から逃れようとしながら、自ら死を速めている。

 今回彼らは「天討」(天罰)を下そうとした。彼らは怖れおののかせようとしたが、それは「天討」を解せぬためではなく、彼らも不満だったからだ。この怖れおののかすのと、不満が忘れられると、ただ迷信と誤った言い伝えだけが残り、次の水害旱魃の時、やはり同じように、迎神と人を咬み殺すことが起きるだろう。

 この悲劇はいつになったら無くなるのだろう?    819

 

付記:傍点(訳文では『 』の部分)を付けた三句は、印刷時すべて削除された。

編集長か検査官の仕業だろう。どちらか分からぬが、原稿を覚えている作者にはとても面白いと感じた。彼らの意向はきっと田舎の人の考えは――迷信だが――やはり皆は知らないに如かずということで、さもなくば、弊害が起こるのを心配で、多くの喉が危険にさらされることになっただろう。    822

 

訳者雑感:

 雨乞いのために迎神するのは、(餓え)死にから救われようとするため。

 迎神を阻もうとする者の喉を咬んで殺すのは、死から逃れるため。

迎神しなければ、雨は降らぬし、その大切な時に帽子なぞ被ってのほほんと見物している男はぶん殴る。それは天罰だ。又、それを止めろという者の喉を咬み殺すのは、そうしないと自分が(天罰で)死んでしまうからと信じているからだ。

 こうした迷信を早く無くさないと、旱魃のたびにこうした悲劇が起きると心配している。

近頃では、雨乞いも儀式として残っているが、雨雲に水銀弾とか薬剤を飛行機で散布して、雨を降らすようにしている由。多少は科学的になりつつあると言えようか。

      2013/06/15

 

 

 

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